特定調停は、債務整理の中でも比較的容易に手続きが取れるもので、自己破産や民事再生に比べると、ハードルが低いイメージですが、必ずしもメリットばかりあるわけでなく、デメリットもあります。
ここでは、特定調停のメリットとデメリットについて、合わせて特定調停をされた方の体験談を通して、特定調停の有効性についても確認していきたいと思います。
特定調停の手続については、特定調停手続で債務整理をされた方の体験談でまとめていますので、合わせて確認下さい。
特定調停のメリットはどんなところ??
他の債務整理と同様に、特定調停を申し立てすると、債権者に申立書を送付する事になりますが、この書類が到着次第、金融業者からの取り立て(督促)をストップする事が可能です。
また、通常、債務整理となると任意整理、自己破産、民事再生は弁護士や司法書士といった、自分の代わりに手続きや交渉を進めてくれる代理人を立てて行うものです。
しかし、特定調停に関しては、債権者と債務者の間に「調停委員」と呼ばれる和解を勧告する立場の方がいて、和解の仲介をしてくれます。
申し立て書類の作成についても、裁判所で丁寧に教えてもらえますし、申し立て費用も比較的安くて済みます(収入印紙と郵便切手代程度)ので、負担も少ないです。
さらに、任意整理と同様の効果がありますので、利息制限法に引き直し計算をする事で、グレーゾーン金利で利用していた借金の場合は、元金を減額する可能性もありますし、分割返済で和解する場合は、将来利息に関してもカットしてもらえる可能性が高いです。
ここまでのメリットをまとめますと、
- 特定調停申し立てで、金融会社からの取り立て(督促)がストップする。
- 弁護士や司法書士のような代理人がいなくても、調停委員が和解を仲介してくれる。
- 申し立て費用が、他の手続きに比べて安いし、弁護士費用などもかからない。
- 申し立て書類も難しくなく、申し立ても比較的簡単
- 利息制限法に引き直し、借金減額の可能性も。
- 分割返済の際、将来利息は放棄し、カットされる。
という事が、特定調停のメリットと言えそうです。
特定調停のデメリットはどんなところ??
一方で、特定調停の手続をすると、他の債務整理と同様にデメリットもあり、一番のデメリットは「信用情報のブラックリスト」の問題です。
ブラックリストと聞くと、若干の抵抗感がありますので、正確に言えば「異動情報(事故情報)」となるのですが、異動発生後5年は借金を新たにする事ができなかったり、クレジットカードやローンの審査にも影響を与える事になります。
この点のデメリットはよく知られるところですが、もう一つのデメリットとして、調停で和解した内容は「債務名義」となり、きちんと支払いを約束通りにしていない場合は、債権者による強制執行をされる可能性があるという事です。
判決、調停調書、和解調書、仮執行宣言付支払督促、執行証書といった、債務がある事を証明する書類で、請求権、当事者、対象となる財産から責任の限度までを明記した書類です。
その他にも、「必ずしも和解に至るわけでは無い」というような事になりえる事もあるのですが、とは言っても、だいたいは和解が成立するようにはなるかと思いますので・・・
「そんな事もあるかも」
程度で知って頂ければと思います。
コラム 特定調停の手続をされた方の体験談
人生のやり直しが出来る特定調停
ギャンブル依存症になっていた為、気が付けば6社もの消費者金融から借金をしており、毎月返済をしては再び借りるという生活を何年も続けていた所、恋人からの勧めで特定調停で借金を片付ける事を決心しました。
まずは簡易裁判所へ行き、特定調停の申請書類の作成と提出を行いました。
これは「特定調停の申立て」と呼ばれる様です。その際にかかった費用は収入印紙500円分を6枚と郵便切手2700円分の合計5700円でした。
手続きはスムーズに終わり、その日から消費者金融への返済は行わなくても良くなった為、調停期日が決まるまで10万円を貯蓄しておく様に担当者から言われたので、コツコツと貯蓄を始めました。
約1ヵ月後に「調停期日呼出状」という、出廷する簡易裁判所の住所と日にちが記載された書類が届き、その期日に簡易裁判所へ行くと、50代後半位に見える男女2名の調停員が現れました。
個室に調停員と入り、「何故借金をしてしまったのか」、「10万円は貯まったのか」、「今後いくら位なら返金出来るのか」を聞かれました。
また、特定調停の申立てを行った際に、現在の借金の額と借りている年数を伝えていた為、過払い金の計算が行われており、実際の返済金額も教えてもらいました。
調停員にはギャンブル依存症になっていた事、10万円を貯める事が出来た事、毎月5万円なら返済が出来る事を伝えました。
その後、調停員が消費者金融に1件ずつ電話で連絡を取り始めました。
話はスムーズに進み、調停員と消費者金融側のみで行われました。消費者金融側で1社のみ中々納得してくれなく、電話の時間が長くなりましたが、最終的には納得してもらえました。
その結果、40万円程度を借金していた消費者金融4社には毎月1万円、10万円程度を借金していた消費者金融には毎月5千円ずつ返済をする事に。
初回の返済のみ毎月の返済額に100円以下の端数のお金と、貯めた10万円が消費者金融6社に追加して分配される事になりました。
決められた期日までに決められた返済を行い続けていれば、3年間で全ての借金返済が完了する事になりました。
返済の計画が立つと、今まで心に重く圧し掛かっていた何かが無くなり、気分がすっきりとした気がしました。
電話で消費者金融とやりとりをしてくれた女性の調停員からは、
「あなたなら、これから人生をやり直せるから、もう借金はしない様に気をつけながら生きて行きなさいね」
と笑顔で優しく諭されました。
特定調停は負担しなければいけない金額が少なく、長年借金をしている人にはぜひお勧めしたい返済手段です。
現在は無事に返済が終わり、借金をしない新しい人生をやり直している最中です。